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広報より

赤血球輸血導入について

あんクリニック訪問診療副院長の山村と申します。この度、2019年6月から当院でも赤血球輸血を導入し、施行可能となったことを御報告させていただきます。

約1年前に私が輸血委員長となり、輸血委員会を立ち上げ、院長・看護部長・担当看護師・担当相談員等と協議を重ねて準備してまいりました。

在宅医療における輸血療法について、この場をお借りして私見を述べさせていただきます。

はじめに輸血療法についてお話します。血液は生命の源ということで、古くは古代エジプトやローマ時代から若返りや病気回復の妙薬として利用されてきました。輸血療法は、1667年にフランスのドニが子羊の血液を貧血と高熱の患者に投与したのが輸血の始まりとされています。以前は副作用の多い治療法でしたが、現在は日本赤十字社により、非常に安全性の高い輸血製剤を御提供いただいております。

次に、輸血療法はどういう場合に実施されるのでしょうか。厚生労働省の「輸血療法の実施に関する指針」には、以下のことが目的として記載されております。

「輸血療法の主な目的は、血液中の赤血球などの細胞成分や凝固因子などの蛋白質成分が量的に減少又は機能的に低下したときに、その成分を補充することにより臨床症状の改善を図ることにある。」

簡単に言いますと、血液が造られなくなってしまったり、出血等で失われてしまった場合、あるいは血液を固まらせる機能が不足している場合等にそれらを補うことで、症状の改善を図るということです。当院では、血液の成分の中でも特に貧血や酸素運搬に大切な赤血球輸血を導入しました。赤血球輸血が実施されることで、高度の貧血により体の各組織への酸素運搬が障害され、酸素不足に陥り、心臓も含めて各臓器や組織の障害が進行していくことが緩和されます。一般的には貧血に伴う諸症状(息切れ、動悸、だるさ、めまいなど)が改善されることになります。

但し、良いところばかりではありません。日本赤十字社により安全性が高められたといっても副作用はゼロにはなっていないのが現状です。痒みなどのアレルギー反応の軽いものは1/10-1/100程度ですが、1/10000程度で呼吸不全が生じたり、1/数万-100万以下で種々の感染症が報告されています。それでも、輸血をした方がより良い効果が期待されると医師が判断した場合に輸血療法は実施されます。その際の輸血量は効果が得られる必要最小限にとどめ、過剰な投与は避けます。 また、他の薬剤の投与によって治療が可能な場合には、輸血は極力避けて臨床症状の改善を図るように配慮いたします。

当院では、前述の輸血委員会で在宅輸血を導入するにあたり、オリジナルの基準を設けており、その項目に該当する方のみに実施するようにしました。

輸血療法により、通院が困難な患者様のお手伝いができればと考えております。ご相談やご不明点は当院までお気軽にお問い合わせください。

 

医療法人社団 敬正会 あんクリニック訪問診療 

副院長 山村武史

 

 

 

{参考文献}

・「輸血療法の実施に関する指針」(平成 17 年9月(平成 26 年 11 月一部改正) 厚生労働省医薬食品局血液対策課)

・「日本赤十字社ホームページより抜粋」

・日本輸血・細胞治療学会「新版 日本輸血・細胞治療学会認定医制度指定カリキュラム」

・小規模医療機関における 輸血マニュアル ~安全な輸血を行うために~平成27年9月 東京都輸血療法研究会 東京都福祉保健局